QRSの幅が広くなるのはなぜ?
心電図新世界セミナー谷口総志です。
前回の解説です。
<不整脈問題018>
この心電図を見た時に何を感じますか?
まず感じてほしいのが
①R-R間隔が不規則
②QRS波が幅広
③QRS波とT波が逆向き
ということです。
つまり、①
参考記事:唯一、見なくても解る不整脈
と、②③
参考記事:PVCのスコトーマ
が混ざってしまっています。
つまり定義が混ざってしまっています。
この判別の仕方を解説します。
まず、
①R-R間隔が不規則
に注目しましょう。
心拍数が速いので不規則感が見えにくいのですが
どうでしょう!
一定の規則がなくR-Rがバラバラですね。
このR-R間隔が不規則なのは心房細動(af)の特徴です。
P波もf波も見えにくいですが
R-R間隔が不規則を満たせばafです。
不整脈で唯一、afだけは見なくても解ります。
だって、モニターから発せられる心拍音が不整になりますから・・・
参考記事:唯一、見なくても解る不整脈
よって、この不整脈名はafです。
ただ、
②と③が鬼門になります。
この条件で見てみるとPVCが否定できません。
ここでPVCが、
なぜQRS波が幅広になるかを考えましょう!
この説明をしてませんでしたね。
PVCは異常な刺激がプルキンエ線維(心室)から出ます。
通常は
房室結節からヒス束→左右脚→プルキンエ線維と伝わるのですが、
右脚・左脚から一気にプルキンエ線維に伝わることで
右心室と左心室が一緒に収縮します。
しかし、PVCは
心室からの異常な刺激がプルキンエ線維に伝わってしまいます。
こんな感じです。
これが何を意味するかというと
同時に収縮するはずの右心室と左心室に
収縮の時間差ができてしまうのです。
正常の伝導であれば右脚・左脚→プルキンエ線維
になるのですが、
もし、右心室から異常刺激が出てしまえば、
先に右のプルキンエ線維に刺激が走り、
そのあとを追って左のプルキンエ線維に刺激が走ることになります。
そうなると
右心室と左心室に収縮の時間差ができてしまいます。
この時間差が幅広のQRS波を形成しているのです。
PVCの「幅の広いQRS波」は、
このような理由から形成されています。
さてさて、本題です。
<不整脈問題018>
は心房細動(af)でした。
でも幅広のQRS波です。
一見、PVCの定義を満たしそうですが、
PVCではありません。
長くなったので次回に持ち越します。
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